イージーマン | MAME☆SORAプログ

イージーマン

本日の小さなお仕事。


それはなんの準備もなく、


僕自身さえ赴けば何とかなる仕事だった。


その仕事の依頼主がいる部署(別室)のドアの前に徐に立つ。


「コンコン」とスマートで知的なノックを想像し、


そのイメージが完全に僕の右手に伝わったと確信したが、


「スコッコッコンスコッコン、スコッ。」


と、僕の右手は間の抜けたノックを披露。


因みに「コン」の回数が明らかに違う要因は、


途中あまりにもイメージとのギャップが生じた為、


軌道修正を試みた結果だ。


失策を帳消しにする為、勢いを付け「失礼しゃーす!」と入室。


「失礼しゃーす」もよくよく考えれば変だ。


そんなに親しい間柄でもなく、相手は一応部長さんなのに。

伺う前に連絡をいれる約束も忘れていた事に気がつく。

もうグダグダ。


別室の中には部長を含め4人いるが、静まり返っている。


僕を見かけるや部長さんが


「おぉ、ちょうど今、話をしてたところ」


と気さくに答えてくれた。ちょっとした説明があって


「じゃ、早速お願い。」といって僕に作業を促す部長さん。

パソコンの前に座った僕は、


ふと後ろに複数の熱い視線を感じる。


まさか僕が作業している間中、


そうやってずっと見ているつもりなのか?


・・・


どうやらそうらしい。


耳を澄ましているつもりはないのだが、


耳鳴りが聞こえるほど静まり返っている。


息が詰まりそうだ。


こうなるとタイピングも焦る。


あ、間違えた。


まぁ、でもイージーな仕事だ。焦らずやれば数分で終わる。


あ。。。。れ。。。。?


「イージー」ってどんなスペルだっけ?


嘘だろ。。。肝心な「イージー」のスペルが思い出せない。


何だって!㊥1レベルの英単語だぞ!


落ち着け!4文字なのは分かってる。


焦るな思い出せ!


「E」、「S」、「Y」はわかっている。あと一文字だ。


実は3文字だったんじゃ。。。バカな!早まるな!


ここで「ESY」と一度でも打ったら、きっと疑われるに違いない。。


この、周りには想像もつかないほど高次元な心の葛藤虚しく、


冷たい視線が僕の後頭部越しに突き刺さる。


試しに「イージー」とカタカナで打って変換してみる。


だめだ。IMEのカタカナ英語辞書機能がONになってない。


しかし、ここでおもむろに設定を弄れば


僕が「イージー」のスペルがわからない


とても悲しい人だと思われてしまう。


それだけは避けたい。。


しかし、違う方法を模索するも全てNG。


こんな時に限って!



万策が尽きた。。。


この期に及んで、庶務部で香典袋を買ったついでに


ノープランでノコノコとやってきた自分を呪う。


あぁー、こりゃ時間がかかりそうだな、


と背後のオーディエンスも各々の席へと戻ったその瞬間、


青天の霹靂とも云うべき閃きが稲妻のように僕を打った。


・・・・・・「A」?。。。。。え?


・・・・「A」だ。。。


・・「A」だよ。


「A」だ!そうだ!


やった!やったよ!


ワッショイ!ワッショイ!


その後息を吹き返したように作業を進める僕は、


今やその背後に脅威を感じることもない。


むしろ英雄だ!


どーですか?


これを使えばとてもイージーに作業が捗りますよ♪


おぉ、こりゃイージーだね♪


ありがとう!そらまめ君!


いえいえ、こんなのイージーですよぉ♪


意気揚々と退室する僕。


帰り際の挨拶にも気持ちが入る。


「失礼しゃーしたー♪」